受賞サービス
地方創生大臣賞
-
動物の本能を魅せる「行動展示」
旭川市旭山動物園(北海道)
生きた動物を展示するという原点に立ち、動物も観客も飽きさせない、本来の躍動感溢れる姿を見せる「行動展示」の展示法を確立。来園者数を劇的に増加させ、全国の動物園に影響を与え続けている。
事例のPDFをダウンロード
- 「行動展示」のパイオニアとしてこの分野の市場を形成、全国の動物園に大きな影響を与えた
- 創意工夫が施された展示により、動物を通して自然を知り、命を認識する場として、来園者に驚きと感動を提供
- 来園者数は毎年160万人以上、北海道や旭川市の観光や経済活性化に大きく貢献
事業内容
日本最北に位置する、公立の動物園
北海道旭川市が運営する、日本最北に位置する動物園。開園は1967年7月1日。
来園者は1983年の59万人をピークに一時減少に転じ、1996年には26万人にまで落ち込んだが、1997年から動物本来の姿を見せることに主眼を置いた「行動展示」を推進。全国的に人気を呼び、恩賜上野動物園、名古屋市東山動植物園などに続き、全国各地から来園者が訪れる人気の動物園としてよみがえった。
来園者は1983年の59万人をピークに一時減少に転じ、1996年には26万人にまで落ち込んだが、1997年から動物本来の姿を見せることに主眼を置いた「行動展示」を推進。全国的に人気を呼び、恩賜上野動物園、名古屋市東山動植物園などに続き、全国各地から来園者が訪れる人気の動物園としてよみがえった。
サービスの背景と目的
お客様に感動していただくことに専念する
来園者が減少、赤字が続き閉園の危機に瀕した際に、収益第一ではお客様目線が薄れ、かえって顧客離れを招くことを経験。「収益を追わず、お客様に感動していただくことに専念する」という考えが生まれた。
そこで来園者の多くが抱く、「動物の新たな魅力を発見したい」という期待に応えるため、動物の姿形を見せることに主眼を置いた従来型の形態展示から、動物本来の能力を引きだし、その特徴的な行動・生活を見せる行動展示への移行を実施した。
そこで来園者の多くが抱く、「動物の新たな魅力を発見したい」という期待に応えるため、動物の姿形を見せることに主眼を置いた従来型の形態展示から、動物本来の能力を引きだし、その特徴的な行動・生活を見せる行動展示への移行を実施した。
サービスの特徴と独自性
優雅に泳ぐ水中のカバも見ることができる
行動展示
まず動物たちに快適な生活を提供すべく、新たな発想・設計のもとで展示施設を新設。動物が本来持つ能力を活かした行動を見せる展示法を全国で初めて実現した。それにより他の動物園では見られない動物の仕草や表情が楽しめるようになり、来園者にかつてない経験や感動を提供することに成功している。
共生展示
生息地を同じくする別種の動物を同一空間で展示する「共生展示」も、「行動展示」とともに推進。共存関係にある動物たちには適度な刺激になり、そして、来園者がより深く動物たちを理解するために大切な要素だと考えている。
サービスをつくりとどけるしくみにおける工夫
飼育員自らが手作りで看板を作り解説を行う
職員の知恵とアイデアを活かす
動物たちをより生き生きと見せるため、施設、展示法には職員によるアイデア・工夫が多く取り入れられている。
動物と最も身近な立場にある飼育員が自ら解説を行う「ワンポイントガイド」や、飼育員による解説つきで動物がエサを食べる様子を観察できる「もぐもぐタイム」が、特に来園者から好評を得ている。
動物と最も身近な立場にある飼育員が自ら解説を行う「ワンポイントガイド」や、飼育員による解説つきで動物がエサを食べる様子を観察できる「もぐもぐタイム」が、特に来園者から好評を得ている。
現場主義に基づいた組織の運営
飼育員の選出は職員による合議制で行われるなど、現場主義に基づいた組織運営がなされている。
動物を安易にキャラクター化しない
旭山動物園では、動物のキャラクター化や擬人化、安易な動物ショーを行わないことをPRポリシーとしている。単に来園者の増加を目的とするのではなく、お客様に動物本来の魅力を正しく伝えることに徹している同園の一貫した姿勢の現れといえる。
行動展示+AR (ICT利活用)
近年、来園者の3割を占める外国人向けに、ICT技術であるAR(拡張現実)の活用を推進。園内パンフレットにスマートフォンをかざすと映像と音声で動物の見どころを解説するなど、外国人にも親しまれる環境づくりを進める。
得られた成果や与えた社会的影響
高い木の上を好むオランウータン。動物と人間の間にガラス壁は無い
行動展示の一例。狭いところを泳ぐアザラシの習性
来園者の増加
行動展示を始めた1997年以降、来園者は増加の一途を辿り、2004年には月間来園者数で恩賜上野動物園を上回る月もあった。2006年には年間来園者数が300万人を突破した。
ブームのピークを過ぎた現在も、毎年160万人以上の来園者数を記録。所在地の自治体人口と来園者数の割合は平均値の9倍以上で、他に比べ圧倒的に高い。
ブームのピークを過ぎた現在も、毎年160万人以上の来園者数を記録。所在地の自治体人口と来園者数の割合は平均値の9倍以上で、他に比べ圧倒的に高い。
地域への経済効果
旭山動物園の人気は旭川市の観光客数を底上げし、2005年からは毎年500万人以上を記録。ある大学の試算によると、1996年から2004年の間に同園がもたらした旭川市全体への経済効果は193億円以上とされる。
全国的な人気・知名度を誇る同園は今や、北海道全体の観光業をも牽引する非常に重要な役割を担う。地方創生の好例として全国の動物園職員、自治体職員や議員の視察が相次いでいる。
全国的な人気・知名度を誇る同園は今や、北海道全体の観光業をも牽引する非常に重要な役割を担う。地方創生の好例として全国の動物園職員、自治体職員や議員の視察が相次いでいる。
動物園の新たな形を示し、全国に影響を与えた
動物本来の生態を見て、感じてもらうことが、来園者に対する最上級のサービスであるという信念のもと、行動展示の具現化に徹底して努めることで、他の動物園との差別化、価値向上を実現。旭山動物園は、動物園としてのサービスの新たな観点での捉え直しにより、今までにない経験価値を提供するサービスを生み出したといえる。全国の動物園に与えた影響は大きく、今では多くの動物園が行動展示を取り入れている。
組織データ
-
事業者名
旭川市旭山動物園
-
本社所在地
北海道旭川市
-
業種
動物園
-
従業員数
67名
-
創立年月日
1967年7月1日
-
URL
※掲載されている情報は、2016年7月12日現在のものです。
※掲載写真は本賞に関係のない使用目的での2次利用を固く禁じます