受賞サービス
地方創生大臣賞
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在宅医療により地域を再生する
へき地医療サービス医療法人ゆうの森(愛媛県)
高齢化と過疎化の問題に直面するへき地において、医師の負担が少なく住民患者からも喜ばれる、持続的かつ他地域へ展開可能なへき地医療を実現したサービス。地域医療の充実、経営の安定化、地域の活性化などを同時に実現している。
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- 都市部の医師が毎日交代で常駐する診療所と、24時間対応の在宅医療を組み合わせた新たな事業モデルで、患者の利便性と収益性を両立
- 周辺には介護施設や薬局の進出などの関連市場も生まれ、へき地医療を志す若い研修医が増えるなど、へき地医療の優れたモデルとなっている
事業内容
高齢率の高い過疎のへき地。主産業はみかんと漁業
在宅医療に特化した医療法人
愛媛県にある、在宅医療に特化した医療法人ゆうの森。訪問医療専門の診療所「たんぽぽクリニック」を中心に、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などを運営する。
2012年、愛媛県西予市において、へき地医療に取り組む「たんぽぽ俵津診療所」を開設。24時間365日対応の在宅医療の導入や、地域との共生を図るさまざまな取り組みで、他に類を見ない「最期まで安心して暮らし続けることのできる地域の創出」をめざしている。
2012年、愛媛県西予市において、へき地医療に取り組む「たんぽぽ俵津診療所」を開設。24時間365日対応の在宅医療の導入や、地域との共生を図るさまざまな取り組みで、他に類を見ない「最期まで安心して暮らし続けることのできる地域の創出」をめざしている。
サービスの背景と目的
毎朝30分、本院とへき地診療所をつないだWeb会議を行う
へき地にも安心できる医療を
2012年、愛媛県松山市から100km のところに位置する公立診療所が閉鎖されることとなった。場所は町の人口1,200余名のへき地。赤字額は年間3,000万円にも上った。
診療所がなくなることを危惧した地区住民の不安の声に応え、自らの診療所として引き取ることを決めたのがゆうの森の理事長である。「最期まで住み続けられるまち」の実現を使命とし、新しい仕組みでの医療サービス提供を軸に、持続可能なへき地医療を再生させる取り組みをスタートさせた。
診療所がなくなることを危惧した地区住民の不安の声に応え、自らの診療所として引き取ることを決めたのがゆうの森の理事長である。「最期まで住み続けられるまち」の実現を使命とし、新しい仕組みでの医療サービス提供を軸に、持続可能なへき地医療を再生させる取り組みをスタートさせた。
サービスの特徴と独自性
24時間365日対応のへき地診療所
本来であれば1人の医師を常駐させる必要がある診療所だが、県との調整のうえ、都市部の複数のドクターの交代勤務制を実現した。曜日ごとに固定の医師が毎日松山から移動し、午前は外来診療、午後は訪問診療を行う。夜は診療所併設の住居に宿泊。翌朝、翌日担当の医師と入れ替わることで、へき地での勤務を安定的・継続的に行える仕組みとなっている。地域住民にとっても専門分野に応じた複数の医師の診察を地元で受けられるメリットを生んでいる。
最期まで自宅で暮らせる在宅医療サービス
80年、90年とその地域で暮らしてきた高齢者が、最期は知らない町の病院のベッドで亡くなる、そういった選択肢しかなかった地域の現状に、24時間対応の往診体制と在宅医療サービスを提供。住み慣れた自宅での療養や看取りが可能な体制を確立し、最期まで安心して暮らし続けられる環境をつくり上げた。
サービスをつくりとどけるしくみにおける工夫
同院が発行する冊子や本は在宅医療のバイブルとして多くの人を支えている
ICTによる情報共有でグループ診療を可能に
電子カルテならびに、へき地と都市部をつなぐクラウド型の情報共有ツールやモバイル端末を導入。診療方針や患者情報などを即時的かつ多方向から共有できる体制を整え、複数医師によるグループ体制の診療所運営を可能にした。
在宅医療を新たな診療報酬の柱に
24時間365日対応の在宅医療を組み合わせることで、ベッドを持たない診療所の問題を解決。満足度の高いサービスを提供すると共に新たな収益源にもなり、赤字体質から脱却、経営基盤の安定化を図った。
地域の一員となり地域をリードする取り組み
地域とのつながりを深めるため、地元イベントに積極的に参加し、在宅療養を行う寝たきりの高齢者に外出の楽しみを知ってもらうため、診療所自ら夏祭りも開催している。
また、地域住民対象の健康教室で住民の医療知識向上に取り組む他、医療を志す学生向けのサマーキャンプも主催。地域医療ワークショップやフィールドワークを通し、地域医療の魅力を若者たちに体験してもらう機会を提供している。
また、地域住民対象の健康教室で住民の医療知識向上に取り組む他、医療を志す学生向けのサマーキャンプも主催。地域医療ワークショップやフィールドワークを通し、地域医療の魅力を若者たちに体験してもらう機会を提供している。
得られた成果や与えた社会的影響
診療所周辺には薬局、介護施設などの関連市場も生まれている
医療費の削減
年間3,000万円の赤字で閉鎖の危機にあった診療所だが、在宅医療を収入源とする事業モデルを確立し、現在は黒字経営を継続。また、本来であれば入院費用のかかる患者が少額で済む在宅診療に移行しており、総体での医療費削減に貢献している。
雇用の創出
診療所、薬局、介護施設、介護サービスといった一連の事業の拡大・開始により、地域での雇用を創出した。
過疎地域の医療のモデルを提示
高齢化と地方の過疎化は日本の社会問題のひとつ。過疎地域における医療の空洞化への対策が急務とされている中で、人口1,200人の町でも診療所経営が成り立つという、へき地医療の新たなモデルを示した。
へき地医療を支えるスタッフたち
組織データ
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事業者名
医療法人ゆうの森
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本社所在地
愛媛県松山市
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業種
医療
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従業員数
80名
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創立年月日
2000年10月
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URL
※掲載されている情報は、2016年7月12日現在のものです。
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