受賞サービス
内閣総理大臣賞
-
街のブランド化に向けた
丸の内再構築の地域協働型プロデュース三菱地所株式会社(東京都)
丸の内エリアのビジネスセンターとしての価値を捉え直し、「世界で最もインタラクション が活発な街」をコンセプトに、従来のディベロッパーの枠を超え、公的空間も含めた丸の内エ リアの街全体の変革をトータルプロデュースしている。
事例のPDFをダウンロード
- エリア内の約7割を占める他の地権者との協議体制、地権者と千代田区・東京都・JR 東日本との 公民連携体制を構築
- ハードとソフトの両面から街づくりを進め、土日も賑わう丸の内エリアを実現。日本を代表する ビジネスセンターとして、グローバル都市・東京の国際競争力を向上させた
- イノベーションの発信基地にむけた街づくりは現在も続いており、その取り組みは日本独自の 「場のデザイン」と同時にグローバルへの普遍性を持つ
事業内容
行幸通りから見た丸の内エリア
120年以上にわたり「街づくり」をリード
1890年に原野だった東京・丸の内一帯を購入し、日本最初の本格的な賃貸オフィス街の開発を手掛ける。以来120年以上、このエリア一帯を「世界のビジネスセンター」へ育て、現在は休日も来街者が楽しめる賑わいのある街に変革させた総合ディベロッパー。「まちづくりを通じた社会への貢献」を基本使命として掲げ、その事業領域はオフィスや商業施設の開発・賃貸・運営管理、収益用不動産の開発、住宅の開発・分譲、設計監理や不動産仲介など多岐にわたる。1970年代から海外事業に取り組んでおり、米国・欧州・アジアの3極体制で展開する。
サービスの背景と目的
高度成長期以降、時代の先端から取り残されていった
同社の丸の内エリアの開発は、1890年に政府から土地の払い下げを受けたことから始まる。明治の近代化に伴って、当時のロンドンの金融街やニューヨーク市中のビル街に肩を並べるべく、赤レンガのオフィス群を開発していった第1次開発。続く第2次開発では、1950年~ 70年代にかけて、高度成長期の旺盛なオフィス床ニーズに応えるためにさらなる大規模ビルへの建替えを行った。しかし、その後の約20年以上はほとんど手付かずの状態となる。1世紀にわたって日本を代表するビジネスセンターと評価された丸の内エリアも、
時代の先端から取り残されたような形となり、建物の老朽化によってイメージのかげりが指摘された。また、1980年代に入ると、東京では高規格のオフィスビルが次々と建設され、ハードの良さだけでは差別化が難しく、立地する街全体の魅力がオフィス選びの決め手ともなってきた。
約100年前の丸の内の街並み
1960 年当時の丸の内仲通り
現在の丸の内仲通り
ビル単体の開発から、エリア全体の価値向上へ
このような状況を打開するため、1998年に同社はハードとソフトの両面から街づくりを進め、「丸の内再構築」に取り組む第3次開発をスタートさせる。「従来は銀行の店舗が立ち並び、毎日15時になるとシャッターが下ろされ閑散としていた」ビジネス特化型の街から、「丸の内に来ることが楽しくなり、さまざまな交流ができる」多様性を持った街づくりへ大きく舵を切っていった。
ハード面での取り組みでは、丸ビル(2002年竣工)、新丸ビル(2007年竣工)をはじめとするビル単体の開発だけではなく、メインストリートである丸の内仲通りの再整備なども行った。歩道の幅を広げ、四季が感じられる街路樹を植えるとともに、道路をオープンカフェやイベントでも活用し、賑わいを創出。 直近では、地下1,500メートルから「大手町温泉」を採掘した大手町フィナンシャルシティグランキューブや、エリア初のサービスアパートメントを導入した大手町パークビルディングなど、丸ビル竣工以降、15年間で計12棟の再開発を進めてきた。
ハード面での取り組みでは、丸ビル(2002年竣工)、新丸ビル(2007年竣工)をはじめとするビル単体の開発だけではなく、メインストリートである丸の内仲通りの再整備なども行った。歩道の幅を広げ、四季が感じられる街路樹を植えるとともに、道路をオープンカフェやイベントでも活用し、賑わいを創出。 直近では、地下1,500メートルから「大手町温泉」を採掘した大手町フィナンシャルシティグランキューブや、エリア初のサービスアパートメントを導入した大手町パークビルディングなど、丸ビル竣工以降、15年間で計12棟の再開発を進めてきた。
街の魅力と利便性を高める多様な機能を導入
丸の内エリアの移り変わり 1992年(左)と2016年(右)
丸の内エリアの移り変わり 1992年(上)と2016年(下)
エリア内に託児所も誘致
一方、「丸の内ならでは」の価値を提供し、街全体の競争力強化に取り組むためには、ソフト面においても充実した取り組みが必要との認識のもと、その開発・実施を専門的に担う部署を1999年に立ち上げた。さらに、2001年には、「街」を一つのブランドと捉え、その価値向上の戦略を企画・実行する部署である「街ブランド室」(現在の街ブランド推進部)を組成する。以来、「街の総合プロデューサー」として、街の多機能化を進めていく。
1)ブランドショップやレストランの出店などによる商業施設の誘致や音楽・アート・環境・スポーツ・健康・食・地方創生・季節・祝祭など多彩なイベントを開催する「賑わい」の機能、2)ホテル・美術館などの「文化・都市観光」機能、3)スタートアップ企業・ベンチャー企業を新たに呼び込み、「産学連携・インキュベーション・イノベーション」を促す機能、4)託児所、フィットネスクラブ、クリニック、学びの場などの「就業支援」機能を今までの街に取り入れ、強化することで、丸の内エリアを就業者も来街者も楽しめる場所へと変貌させていった。
1)ブランドショップやレストランの出店などによる商業施設の誘致や音楽・アート・環境・スポーツ・健康・食・地方創生・季節・祝祭など多彩なイベントを開催する「賑わい」の機能、2)ホテル・美術館などの「文化・都市観光」機能、3)スタートアップ企業・ベンチャー企業を新たに呼び込み、「産学連携・インキュベーション・イノベーション」を促す機能、4)託児所、フィットネスクラブ、クリニック、学びの場などの「就業支援」機能を今までの街に取り入れ、強化することで、丸の内エリアを就業者も来街者も楽しめる場所へと変貌させていった。
サービスの特徴と独自性
公民が連携して、エリア全体の街づくりをプロデュース
同社は、エリアとしての魅力を高めるため、他に先駆けて、従来のディベロッパーの枠を超え、公的空間を含めた街全体の変革に着手した。「丸の内再構築」という第3次再開発のスタートに先立ち、まず、120ヘクタールに及ぶエリアの7割を占める他の地権者と連携する必要があり、1988年には約70の企業・団体に呼びかけ、「大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会(大丸有協議会)」を設立。その後、1996年に、協議会と東京都、千代田区、JR東日本による「大丸有まちづくり懇談会」を発足させ、全地権者と行政の公民連携による、大丸有地区の将来像を議論、検討する場を設けた。同じビジョン・目標(ガイドライン)を共有し、対話
を重ねながら、長い時間をかけて広大なエリアの街づくりを行ってきた事例は国内はもとより、世界でもなく、このサービスの大きな特徴となっている。エリアマネジメントの運営を担う「大丸有エリアマネジメント協会」、環境共生・サスティナブルの活動を担う「エコッツェリア協会」の両団体と連携しながら、さらなる活動強化を図っている。
オープンイノベーションを促す機能を強化し、他エリアとの差別化を図る
新しいビジネス創造のプラットフォームとして、国内やアジアを含めた海外の成長企業を対象にした事業開発支援付サービスオフィス「EGG JAPAN」をはじめ、ベンチャー企業や多様なプロフェッショナル人材が集まるビジネス交流の場である「東京21cクラブ」、国際金融人材の育成と金融関係者間の交流促進を図る「東京金融ビレッジ」など、多様な場の整備や各種支援策など、イノベーションの発信基地にむけた街づくりが現在も続いている。これらの取り組みによって生み出される環境は、人材・ネットワーク・情報の集積とあいまって、既存の大手企業テナントにとっても、新たな事業成長のための種を得ることのできる価値ある機会として認識されるとともに、新規の有力テナントを呼び込む好循環も期待されている。
サービスをつくりとどけるしくみにおける工夫
他エリアの先駆けとなる各種開発手法を実現
ビル用途の入替や、特例容積率適用区域制度を活用した容積移転(東京駅⇔エリア内複数ビル)、大手町連鎖型都市再生プロジェクトなど、他エリアの先駆けとなる各種開発手法を実現し、地権者の個別ニーズと社会要請に対応する街づくりを進めてきた。また、丸の内仲通り・行幸通り・大手町川端緑道が2015年に東京圏で初となる国家戦略特区における「国家戦略道路占用事業」の適用区域に認定。今後も、これらの道路空間を活用したイベントなどの施策が検討されている。
一歩踏み込んだ、街のおもてなし役の活躍
街のおもてなし機能を高めるため、街中の清掃をしながらエリア内を巡回、エリアマップなど街の情報を常時携帯し、道案内だけでなく、写真の撮影スポットも案内する、街のコンシェルジュ役としての「クリーンアテンダント」を配置している。また、街やビルの運営管理に携わる同社グループの社員が、共通のバッジ・ストラップを身に着け、道案内や写真撮影のお手伝い、街の清掃、安全・安心に関する活動などを通して、“ おもてなし” の気持ちを持って来街者を迎える「丸の内アンバサダー」の取り組みも推進している。
社内表彰制度:「ひとまち大賞」の実施
社員のモチベーション向上や、グループ内における質の高いサービスの共有を行うため、コーポレートブランドスローガン「人を、想う力。街を、想う力。」を実践する取り組みやサービスを表彰する「ひとまち大賞」を2012年度に創設。若手の社員有志が、自身の就活経験をもとに就活生に役立つ書店やカフェ等の便利スポット等を掲載した「大手町・丸の内・有楽町 就活応援MAP」を作成し、丸の内エリアで配布した取り組みが社長賞を受賞するなど、毎年実施されている。
得られた成果や与えた社会的影響
丸の内再構築に関する主な指標
世界における東京の地位向上を牽引
オフィスに加え、賑わい機能、文化・都市観光機能、起業・イノベーション機能を備えたインタラクションが活発な都市を実現。世界のビジネスセンターの先導的な模範となり、東京の地位向上を牽引している。2017年には、同社が中心になり、都心型MICE※1の誘致を促進する「DMO※2東京丸の内」を発足するなど、2020年までに予定される国際スポーツイベント(ラグビーW杯、東京オリンピック・パラリンピック)などを契機に一層高まるビジネス交流を視野に入れた取り組みを進めている。
来街者が大幅に増加
「丸の内再構築」によって、来街者が大幅に増加。特に土曜日、日曜日の歩行者交通量*が2倍以上の増加となっている。
プロフェッショナルファームの集積が進む
日本における4大法律事務所(アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所)の全てと、4大監査法人のうちの3社(有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwC あらた有限責任監査法人)が丸の内にオフィスを構えるなど、プロフェッショナルファームの集積が進んでいる。(2018年5月時点) また、2018年3月末時点
の丸の内の貸付面積(三菱地所単体)は、2000年3月末比で約1.7倍に増加している。
エリア再開発のモデル事例として注目
公民連携による街づくりの取り組みは、全国の都市での再開発、旧市街の再生、再整備のプロジェクトに対して、優れた先行事例として注目され、各自治体の開発担当の責任者をはじめ、組合や民間企業など数多くの視察の受け入れや、再開発事業の具体的な運営・管理に対する助言、支援も行っている。2016年には、「全国エリアマネジメントネットワーク」を設立し、エリアマネジメント団体間の横の連携を強化している(丸の内エリアへの視察は、大丸有エリアマネジメント協会が担当)。
※ 1 MICE
Meeting,Incentive, Conference またはConvention, Exhibition の頭文字を取ったもので、大きな集客効果を望めるビジネスイベントの総称
※ 2 DMO
Destination Marketing Organization の頭文字を取ったもので、官民などが連携し、地域と協同で観光地域づくりに取り組む法人のこと世界のビジネスセンターの先導的役割を果たす
Meeting,Incentive, Conference またはConvention, Exhibition の頭文字を取ったもので、大きな集客効果を望めるビジネスイベントの総称
※ 2 DMO
Destination Marketing Organization の頭文字を取ったもので、官民などが連携し、地域と協同で観光地域づくりに取り組む法人のこと世界のビジネスセンターの先導的役割を果たす
組織データ
-
事業者名
三菱地所株式会
-
本社所在地
東京都千代田区
-
業種
都市開発
-
従業員数
806名(連結8,856名)
-
創立年月日
1937年
-
URL
※掲載されている情報は、2018年9月現在のものです。
※掲載写真は本賞に関係のない使用目的での2次利用を固く禁じます