優秀賞

ICTを利活用した
セコムの訪問看護サービス

セコム医療システム株式会社(東京都)

1991年に民間企業で初めて訪問看護サービスを開始した同社が、ICT の利活用により、誰が対応しても同じレベルで高品質な訪問看護サービスの提供を実現した。

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  • モバイル端末と連動したICTシステムの構築により、カルテ・マニュアル・業務連絡等の情報共有を実現。訪問先から医師への相談も可能とし、看護師の労働環境を改善
  • 人材確保が厳しい訪問看護事業においてICTを有効活用する参考となるモデルであり、地域による医療格差の軽減にも貢献しうるサービスである

訪問看護サービスのパイオニア

1962年に日本初の警備保障会社として設立されたセコム株式会社のメディカル分野を担うセコム医療システムは、1991年に「訪問看護」と「薬剤提供」を行う在宅医療事業として始まった。現在は、提携病院や地域のクリニックと連携し、全国35ヵ所に訪問看護ステーションを有する。年齢や疾患を問わず、在宅医療を要望する幅広い利用者のケアと支援に欠かせない存在となっている。
早くからICT を活用した医療事業サービスに注目し、クラウド型電子カルテや病院経営分析システムを開発した。

サービススキルの標準化と質の向上

セコム医療システムの看護サービスは、利用者に寄り添いその人らしさを大切にした看護の提供を目指している。そのため、利用者を理解し把握するための情報は重要であるが、訪問先で知り得た情報の共有ができず、看護師によって利用者への対応に差が生じていた。
そこで2014年からモバイル端末を使用できるシステムを導入。訪問先でも利用者情報が確認でき、誰が対応しても同レベルの高品質な看護サービスが提供できる環境を創出した。

セキュリティの担保

従来は、利用者情報(カルテ)は紙ベースで、機微な個人情報であるため持ち出しが禁止されていたが、母体がセキュリティ会社であることを活かし、個人情報保護に配慮したシステム構成とした。セキュリティが担保された状態で、利用者情報、マニュアル、業務連絡の入力・閲覧ができる。
また、訪問看護師が持ち運ぶモバイル端末は、情報の閲覧後にデータが残らないシステムになっている。

モバイル端末を使用している様子

モバイル端末を全看護師に配付

利用者情報やマニュアルに、日時場所を問わずアクセスできるモバイル端末を導入し、訪問看護に従事する全看護師に配付した。蓄積された看護記録やマニュアルを簡単に閲覧できるため、教育ツールとしても機能。看護師の技術向上にもつながり、誰が訪問しても同レベルのサービス提供を実現している。

医師との連携

モバイル端末は、医師との連携にも欠かせない。利用者宅を訪問している看護師から医師に対して、利用者の状態を写真や動画付きで連絡することが可能で、緊急で医師の指示を受ける体制を構築した。
利用者の情報を早く正確に把握できるため、24時間対応の緊急電話相談の際にも有効となっている。

ICT活用を定着させる体制づくり

(1)各訪問看護ステーションにICT 担当者を配置し、操作練習やオリエンテーションなどを担当する。また、全国に配置されたICT担当者全員を集めた情報共有会議を年3回開催。各ステーションからの、システムに関する疑問点や改善希望などを伝達する機会になっている。システムは、変わりゆく現場のニーズにあわせカスタマイズされている。
(2)システムを現場に定着するために、紙ベースでの業務を削減。スケジュール管理をモバイル端末で行えるように整備し、事務作業の効率化を推進した。さらに、相手に分かりやすく伝えるコツも教育した。「看護業務に専念できるシステム」という意識を訪問看護師に浸透させ、業務とシステムが連動する体制を築いた。

利用者からの声

「自分のことを誰でもわかってくれている」などの声が寄せられる。システム導入後は、利用者数も年々増加し一定の評価を獲得。利用者のニーズと期待を超えるサービスを提供できている。

看護師の継続的な勤務の促進

モバイル端末の配付によって、看護ステーションに立ち寄らなくても、申し送り事項や各種事務手続きを行えるようになった。また、紙ベースでの二重三重の手書き作業も削減され、看護師の業務負担の軽減に貢献。その結果、時短勤務や訪問先への直行直帰など柔軟な勤務体系を実現した。多くの訪問看護師が自身のワークライフバランスにあわせた働き方で活躍できるようになり、継続的な勤務の促進につながっている。

地域包括ケアの構築

訪問看護サービスにおけるICTの活用は、遠隔医療のインフラとしての拡張性など、地域による医療格差の軽減につながると注目を集めている。一方で、2016年の報告によると、全国の訪問看護業界の75%が紙で記録をしており、モバイル端末を活用できている事業所は全体の7%以下と普及が進んでいない。慢性疾患や核家族・単独世帯の増加により、在宅での治療や自立支援など訪問看護の需要はさらに高まるなか、システム活用のノウハウは業界全体のICT活用の底上げ・発展につながることが期待される。

組織データ

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