受賞サービス
地方創生大臣賞
-
ICTと地域観光興しによる
持続可能な交通まちづくりイーグルバス株式会社(埼玉県)
20年前より路線バス事業の再生に向けて需要創出に取り組む。3段階のハブ構想として需要創出をモデル化する。第1は、既存路線をハブ&スポーク化。バス台数を増やさずに運行密度の増強を可能とする。第2は、ハブに商業施設を併設。新たな賑わいを創出する。第3では、複数のハブを結節し、多様な商業機能等の利用を可能とする。
事例のPDFをダウンロード
- 過疎地における路線バス事業者の役割を、単なる「移動手段の提供者」ではなく、地域と連携したまちづくりの一翼を担う「需要創造の主体」へと変革させている。
- 行政区をまたいだ連携が可能というバス事業の強みを活かし、積極的に行政等にまちづくりを働きかけることで本業の幅を広げている。その結果として、路線バスの存在意義と事業性を高めている。
- 自社開発による日本発の路線バスサービスの仕組みを海外(ラオス等)にも展開している。
事業内容
赤字路線バスの運行を継承
埼玉県西部を主たる事業圏域とするバス会社。「創客」を理念に、路線バスに加えて、工場・学校・福祉施設等への送迎バス、貸切観光バス、空港連絡バス、高速夜行バスの運行を展開。
路線バスの運行は、川越市内での小江戸巡回バス、日高・飯能線、東秩父村、ときがわ町の4地区。うち、2地区(日高・飯能線、東秩父村)は他社からの運行継承、1地区(ときがわ町)は運行を受託していた村営バスからの継承であり、いずれも赤字路線であった。路線バスは、全国的に利用者の減少が続く状況にある。
路線バスの運行は、川越市内での小江戸巡回バス、日高・飯能線、東秩父村、ときがわ町の4地区。うち、2地区(日高・飯能線、東秩父村)は他社からの運行継承、1地区(ときがわ町)は運行を受託していた村営バスからの継承であり、いずれも赤字路線であった。路線バスは、全国的に利用者の減少が続く状況にある。
サービス提供の背景・経緯
赤字路線での乗客増に成功
運行を継承した路線は、乗降実態が見えず、赤字の理由が不明であった。そこで、20年前より運行データの見える化等の工学的アプローチを開始。車両にセンサーを設置し、停留所ごとの乗降数、運行遅延時間等のデータを収集。また、収集したデータを分析するソフトウェアを独自に開発。運行ダイヤの再編、停留所の位置の見直しや運行路線の最適化を図り、コスト削減と乗客増に成功する。
「需要創出」の必要性を見いだす
引き続き工学的アプローチによる改善継続を目指すが、その効果には限界があった。更なる改善対策として、地域と連携したまちづくりによる「需要創出」の必要性を見いだす。これは、地域と連携した観光興しを通じた、地域活性化と公共交通の維持を両立させるものである。
サービスの概要とその革新性
経営改善に向けた3段階の取り組みを提示
路線バス事業者がまちづくりを担うまでに至る経営改善モデルとして、❶見える化、❷最適化、❸需要創出からなる3段階の取り組みを提示。見える化と最適化は、20年前より取り組む工学的アプローチである。需要創出は、行政等の地域と連携した観光興しによる交通まちづくりの段階である。これは、閑散期である日中や週末における地域と連携した観光客誘導や、路線バス網に乗り換えターミナル拠点を新設するハブ&スポーク化などを内容とする。ハブ&スポークとは、拠点(ハブ)とそれ以外とを放射状(スポーク)に結ぶネットワークの概念である。
ハブ&スポーク型バス網として3段階のモデルを提示
経営改善モデルに加えて、ハブ&スポーク型のバス網として3段階のモデルを提示。第1段階では、既存のバス網のハブ&スポーク化を行う。これにより、バス台数を増やさずに運行密度の増強が可能となる。第2段階では、ハブに商業施設を併設し、新たな賑わいを創出する。第3段階では、複数のハブを結節し、多様な商業機能等の一体的利用を可能とする。これら3段階のモデルは、路線バスの利用を通じて暮らしに利便性を付加するものである。
サービスの成果・実績とその優越性
ハブ&スポーク型を2地区で実現
2地区で路線バス網をハブ&スポーク型に再編する。2010年にときがわ町、2016年に東秩父村にハブを新設。週末のレジャー・ハイキング客も利用しやすい交通体系としてバス利用に呼び込みつつ持続可能性を高め、地域の足としてのバスの存続を目指す。
サービスイノベーションとして優れている点
需要創造の主体という新たな役割モデルを提示
路線バス事業者が担う役割を、これまでの路線バスという移動手段の提供者から、地域と連携したまちづくりの一翼を担う需要創造の主体へと変革させている。行政区域をまたいだ連携を実行できる路線バス事業者の強みを活かし、地域活性化を積極的に働きかける新たな役割モデルを提示している。これにより、路線バス事業の本業の幅を広げ、地域での存在意義と事業性を高めている。
社会の発展への寄与
路線バス再生に向けた入口戦略と出口戦略を提示
見える化により得られる1便あたりの乗客データの分析からは、❶バス事業者による継続的改善により、運行維持が可能な便、❷民営では支えられないが、一定のニーズがあり、公共交通として他の交通手段により維持すべき便、❸ニーズがない便、これら3区分が明示される。これは、自治体等での路線バスの運行見直しの方向性を示すものである。自治体による啓発や新たな意思決定にも役立つ。このサービスの流れは、乗客減少が続く環境下、路線バス再生の入口戦略(データに基づく現状分析など)と出口戦略(運行見直しなど)のプロセスでもある。
ハブ施設である ときがわ町せせらぎバスセンター
既存のバス網を再編し、ハブ&スポーク化を実現
日本発のサービスをアジアにも展開
自社で開発したシステムを活用し、ラオス、カンボジアでのバス運行のコンサルティングにも乗り出す。国内と同様に、バス車両にセンサーとカメラを搭載しデータを収集。その分析結果を用いて各種の経営改善プログラムを現地機関等に提案している。
組織データ
-
事業者名
イーグルバス株式会社
-
本社所在地
埼玉県
-
業種
運輸・交通
-
従業員数
214名
-
創立年月日
1980年
-
URL
※掲載写真は本賞に関係のない使用目的での2次利用を固く禁じます