受賞サービス
経済産業大臣賞
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おもてなし×サービス工学による
懐石料理サービス「屋敷シリーズ」がんこフードサービス株式会社(大阪府)
歴史的価値のある伝統家屋で懐石料理を日本文化の体験とともに味わうサービス。「高付加価値でリーズナブル」を実現するため、科学的・工学的アプローチで仕組み化されたサービスシステムを構築。8つの要素で体系化したサービスシステムにより、効率化と価値向上を両立している。
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- 歴史的価値のある伝統家屋・日本庭園の中で懐石料理を提供する「おもてなし」を、バックヤードにおける徹底的な工学アプローチ(従業員のサービス導線解析による最適化、搬送サービスロボットの活用など)による効率化を行いながら提供することで、高い労働生産性を実現している。
- この「屋敷シリーズ」の営業利益率は9~10%程度と高水準。従業員は、本来注力すべきサービス価値創出に集中し、労働生産性は5年で11.7%向上し、労働時間は10年で34%減、離職率は10年で6.6%減。
- 産業技術総合研究所との長年の連携による、サービス工学アプローチのロールモデルである。
事業内容
高付加価値でリーズナブルな日本料理を提供
創業以来、「旨くて、安くて、楽しい」をスローガンとする寿司チェーンを展開。新たに、高付加価値かつリーズナブルな日本料理店のビジネスモデルの構築に挑戦。歴史的価値があり日本庭園も持つ伝統家屋で、懐石料理を日本の文化の体験とともに味わう「屋敷シリーズ」を1991年より開始。「日本の普段」に触れられるとして外国人観光客にも人気。事業のベースに、科学的・工学的アプローチで仕組み化したサービスシステムがある。
サービス提供の背景・経緯
サービスに科学的アプローチを導入
2009年、気づきサイエンス研究所を設立。サービスを科学する企業風土の醸成を目指す。8要素(ロボティクス・位置計測・シミュレーション・スケジューリング・生産システム・VR・データマイニング・心理計測)からなるサービスシステムを開発。スタッフがサービスを科学的・工学的に捉えて仮説検証を繰り返す改善サイクルを定着させ、サービスの効率化と価値向上の両立に取り組む。
日本の文化に触れられるサービスモデルを開発
歴史的価値のある多くの伝統家屋の取り壊しに直面する中で、日本の文化的風景が消えゆくことに問題意識を持つ。1991年、単なる料理店ではなく、料理を中心とした日本の文化に触れられるサービスモデルとして「屋敷シリーズ」を開発。
サービスの概要とその革新性
日本の文化を幅広く体験できる
コンセプトは、「日本文化を幅広く体験できる場づくり」。本格的な懐石料理が日常的な外食の範囲内で楽しめる。数千坪の庭園に佇む伝統建築を活かした料亭で、絵画、日本舞踊鑑賞、和菓子づくりや舞妓体験もあわせて楽しめる。
科学的にサービス水準を向上
エスノグラフィー(行動観察)を活用し、顧客の事前期待とスタッフの意識のギャップを定量分析で見える化する。事前期待への気づきのポイントを定式化して、e-learning向け教材を作成し人材育成も強化。さらに、調理行動に関するデータベースを開発し、調理プロセスとキッチン設計を再編する。早く、楽に、料理人による個人差なく料理をつくることに取り組む。
サービスの成果・実績とその優越性
約135万人の訪日外国人が利用
屋敷シリーズも含めた訪日外国人による利用者は、2013年には約30万人であったが、2018年には135万人へと大きく増加。
「屋敷シリーズ」の営業利益率は9~10%程度と高水準。従業員は、本来注力すべきサービス価値創出に集中し、労働生産性は5年で11.7%向上。労働時間は10年で34%減、離職率は10年で6.6%減の水準となっている。
「屋敷シリーズ」の営業利益率は9~10%程度と高水準。従業員は、本来注力すべきサービス価値創出に集中し、労働生産性は5年で11.7%向上。労働時間は10年で34%減、離職率は10年で6.6%減の水準となっている。
サービスイノベーションとして優れている点
勘と経験の領域であったサービスを仕組み化
属人化しやすいプロセスである接客と調理を行動観察やデータ分析により標準化・再構成する。それにより、人によるばらつきの解消や高効率化、人材育成を加速させている。また、変動に強いオペレーションとなるよう、シミュレーションやスケジューリングのシステムを開発。勘と経験の領域であったサービスを徹底的に仕組み化している。
ロボットと人との協働
スタッフが調理と接客に専念できるように、搬送はロボット(ワゴン)が担うオペレーションを確立。さらにロボット導入により、スタッフがお店全体を見る目線を持つようになり、ロボットとの協働に積極的となる。バックヤードではなく、顧客との接点にロボットを導入したが、ロボットと協働するサービス提供は、顧客からの反応も良い。
社会の発展への寄与
科学的・工学的アプローチを飲食分野で展開
2009年時点ではまだ実践例がなかったサービス工学を、労働集約型であり一見すると適用が難しい飲食分野で導入。サービス業への科学的・工学的アプローチの普及促進のためのロールモデルである。
伝統家屋を外食の場として活用
歴史的価値のある伝統家屋の中で、日本の文化に普段から触れられることを重視。日本の文化を実感できる場の継承に向けて、伝統家屋の単なる保存ではなく、日常的な外食体験の中で日本の文化を感じられる場として活用している。
歴史的建造物内の飲食空間(武蔵野立川屋敷)
歴史的価値のある伝統家屋や近代洋風建築等を活用し飲食空間として使用している
組織データ
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事業者名
がんこフードサービス株式会社
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本社所在地
大阪府
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業種
フードサービス
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従業員数
1,595名
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創立年月日
1963年
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URL
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