経済産業大臣賞

製造と問屋機能を併せた「メーカーベンダー」による顧客密着の市場創造

アイリスオーヤマ株式会社(宮城県)

製造と問屋機能を併せた「メーカーベンダー」という前例のないビジネスモデルに取り組み、流通の無駄を省きつつ、ユーザーインのモノづくりを実現。開発者自身の暮らしの中での不足・不満・不便を解決する「なるほど」「便利」をコンセプトに商品を企画・提案。高い内製化率と自動化、ユーザー目線での価格設定で開発を進め、値ごろ価格で提供し需要を創造。

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  • 生活者の課題を理解し、適切な機能を値ごろ感のある価格で提供する新商品開発の仕組みとしての「新商品開発会議」を年50回、30年以上続けている。提案、評価、知識・スキルの蓄積および共有のサイクルを会議の場で継続することで、新商品開発のための値ごろ感、商品の失敗・成功の勘が全社で共有されている。
  • 売り場作りと接客販売を請け負うセールス・エイド・スタッフ*1らの情報に加え、全社員の声が毎日集まる「ICジャーナル*2」は、顧客と全ての現場を結ぶ情報共有のツールとなっている。
  • メーカーベンダー方式により、ユーザーが求める機能、価格、納期といったユーザーインの発想を実現。年間約1,000の新商品を生み出すプロセス・イノベーションを実現。
*1 セールス・エイド・スタッフ(Sales Aid Staff): 売店で販売をサポートする役割を担う同社のスタッフ。商品の機能を顧客に直接伝えるとともに魅力的な売場作りも行う。全国約650店舗に配置されている
*2 ICジャーナル:Information & Communication の頭文字から命名

原点は東大阪の小さな町工場

1958年、東大阪でプラスチック成形事業を創業。1966年に養殖用ブイ、1970年に育苗箱といったオリジナル商品を開発。下請けから自社製品製造へ乗り出す。2000年代に家電製品事業を開始。LED 電球などを誰もが手に取りやすい価格で販売。2010年代には、東日本大震災の復興支援を機に精米事業も展開。国内外のグループ30社にて様々な分野、業態で事業を展開している。

「メーカーベンダー」への転換

ユーザーのニーズを満たす商品を開発しても問屋の壁があり、商品が流れないという課題に対して、メーカーでありながら問屋機能を自社で持つ「メーカーベンダー」という前例のないビジネスモデルへと転換。ホームセンターとの直接取引をはじめ、品揃え提案や売り場づくりも請け負う。直取引により店頭売上を即時に把握でき、生産と在庫管理が容易になったことが、生活者の不満を解決するユーザーインのモノづくりに繋がっている。

値ごろ価格で商品提案して市場を創造

開発者は、暮らしの中の不足・不満・不便を解決する「なるほど」「便利」をコンセプトに、年間約1,000アイテムの新商品を開発・販売。高い内製化率と自動化、ユーザー目線の価格設定で商品開発を進め、値ごろ価格で提供し需要を創造。

生活者の課題解決

開発者は、生活者の代弁者として生活の中の不足・不満・不便を解決する商品を、毎週月曜に開催される「新商品開発会議」でプレゼン。承認を得るとプロジェクトリーダーとして商品開発、製造、販売の全てに関わりコンセプトを具現化する。

製造と問屋機能を併せたメーカーベンダー方式

メーカーベンダーという前例のないビジネスモデルに取り組み、ユーザーインのモノ作りを実現。流通の無駄を省き、内製化を進め、物流センターの中に製造工場を持つなど、柔軟な製造体制を整え、ユーザーの求める機能、価格、納期を実現。企画プロセス、生産プロセス、物流プロセスなどを包括するプロセス・イノベーションに取り組み続けている。

生活者を代弁する商品開発を推進する「新商品開発会議」

新商品を持続的に生み出す仕組みとしての「新商品開発会議」では、開発者が直接社長に商品案をプレゼン。年間約1,000件の新商品が生み出される。年50回、30年以上続けられている。提案、評価、知識・スキルの蓄積・共有のサイクルを継続してきた中で、値ごろ感、商品の失敗・成功の勘が全社で共有されている。

社員と顧客接点とを結ぶ「ICジャーナル」

売り場づくりと接客販売を請け負うセールス・エイド・スタッフが入力する顧客接点からの声に加え、全スタッフからの声や気づき、考察情報が毎日集まる「ICジャーナル」は、顧客と企画・開発、製造、販売、配送など全ての現場を結ぶ情報共有のツールである。これを通じて、全社員が市場動向、既存商品や仕組みの課題などを共有し、継続的な開発、改善に結びつけている。

全ての人たちに快適な生活を

生活者の悩みだけでなく、国レベルでの課題にも迅速に対応。ICジャーナルによる情報共有とメーカーベンダーの仕組みにより、生活の質向上と社会課題の解決に貢献している。プロセス・イノベーションによる需要創造と社会課題の解決を先導していくメーカーの姿を提示している。

ニューノーマルにも瞬時に対応

2020年、日本国内生産マスクを1億5千万枚/ 月を供給するなど、迅速な経営判断で社会にも大きく貢献。
「メーカーベンダー」の構造。全国8箇所の生産拠点が物流センターも兼ねる
各部署が発売に向けて企画から一斉にスタートする「伴走方式」により年間1,000件の新商品開発を実現

組織データ

  • 組織名

    アイリスオーヤマ株式会社

  • 創立年月日

    1971年(創業1958年)

  • 業種

    製造業(生活用品・家電等製造・販売)

  • 本社所在地

    宮城県仙台市

  • 従業員数

    5,379名

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