内閣総理大臣賞

スタイリストが提案する月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」

株式会社エアークローゼット(東京都)

月額定額制ファッションレンタルサービス。300ブランド35 万着以上の中からプロのスタイリストが選んだ洋服が自宅に届く。スタイリストがコーディネートするパーソナルスタイリングが楽しめる。返却期限なし。返却時のクリーニングも不要。
気に入った洋服は購入可能。30~40代の働く女性を中心とした顧客に、似合う洋服と出会うワクワク感を提供している。

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  • 人とITのベストマッチを追求し、独自のオンラインサブスクリプション、パーソナルスタイリング提案、シェアリング特化物流システムを構築し、ファッション産業の新たな姿を創出。問題点を生の声とデジタルデータの両面から吸い上げ、システムを磨き込み、高速で持続的に改善する仕組みを創り込んでいる。
  • スタイリストの技能は顧客評価や販売率などでレーティングして可視化。会員満足の分析から、スタイリストが顧客に送るコーディネートに関するコメントの重要性に気づき、教育要素に加えるなど、生の声×データ活用の学習サイクルを回している。
  • アパレル廃棄問題に正面から対峙し、廃棄率ゼロの実現を目指す循環型社会の持続可能な仕組みを構築しSDGsにも貢献。今後、メンズ・キッズ・シニア・マタニティなどへの展開を検討しており、さらなる成長が期待される。

洋服のシェアリングを通じた“ワクワク”の提供

会社設立前の2013年より構想開始。2015年2月より、洋服のシェアリングによるファッションレンタルサービス「airCloset」を開始。「“ ワクワク” が空気のようにあたりまえになる世界へ」というビジョンを掲げる。
サービスメニューの拡大に加えて、メンズ・キッズ・シニア・マタニティなどの顧客層への拡大も目指す。

コーディネートを通じた新しいスタイリングの提案

構想時、ライフスタイルを豊かにするサービスに着目。「全ての人が平等に持っているけれども人によって使い方、感じ方が不平等になるもの」として「時間の価値」に注目。特に、結婚、出産、育児などによりライフスタイルが変化する中で、忙しい毎日を送る30~40代の働く女性の時間価値の向上を志向。洋服が最も人の心に近く、ワクワク感を提供できるものと捉え、ファッションレンタルサービスを立ち上げる。かつては「箱」で送っていたが、通勤途中での受け取りや返却時の利便性を考慮し「袋」に変更するなど、顧客の利便性を重視した改善を続けてきている。ニックネームでの社内コミュニケーションや毎週実施する全社会議などにより、イノベーションの種(課題、問題点、顧客の声)を共有し、現場の声や実態を注視する。
「お客様第一」ではなく「お客様の感動が第一」を重視し、コーディネートを通じた新しいファッションとの出会いを提案する。
創業7年目の2021年6月期に黒字化を達成。2022年7月には東証グロース市場に上場。
「airCloset」の利用の流れ

新しい洋服と出会うワクワク感を楽しめる

雑誌や広告などで活躍するプロのスタイリストが顧客の好みに合わせて選んだコーディネート(パーソナルスタイリング)を月額定額で楽しめる。顧客が洋服を選択するのではなく、スタイリストがコーディネートを提案する。
50以上の質問(診断項目)から作成される「スタイリングカルテ」をもとに、様々なジャンルの300ブランド35万着以上の中から、顧客の好みに合った洋服が送られてくる。
プランは、ライト(月1回、3着)、レギュラー(1回3着を月に何度でも交換可能)、ライトプラス(月1回、5着)の3つ。
会員登録者数は80万人、月額会員数は3万人をいずれも突破(2022年10月末現在)。サービス満足度91.8%(2022年6月調査)。

働く女性を意識し、利便性を追求

返却の期限はなく、返却時のクリーニングも不要。気に入った洋服は購入も可能。サイズや好みの登録から、洋服の受け取り、返却、決済まで全てをオンラインで完結。洋服を返すと次の洋服が送られてくる。コンビニでの受け取りや返却も可能。返却時の梱包材も不要。宅配会社と提携し提供する。

30~40代を中心に、20代後半から60代までの幅広い顧客層

顧客層は30~40代の働く女性を中心に、20代後半から60代までと幅広い。顧客の9割以上が仕事を持つ。従来、時間がなく、洋服をじっくり選ぶことができなかった顧客に、似合う洋服と出会う楽しさを提供する。
「airCloset」に加えて、❶スタイリストが提案する洋服を自宅で試着し購入できる「airCloset Fitting」、❷スタイリストにオンラインで直接相談ができるパーソナルスタイリング「airCloset Talk」なども展開する。

ファッションのパーソナライズ化を追求

初回のコーディネート提案はアプリで確認可能。好みであればそのままお届け、好みでなければ再度の選び直しが可能。「自分の好み・自分に似合う」ファッションを求めるパーソナライズ化を追求している。
最初に「スタイリングカルテ」を作成
いろいろなコーディネートを表示し、顧客の好みを割り出す
ファッションタイプ診断結果(無料)の一例
楽しめる要素を加味することにより初期離脱を抑制

人気のブランドも利用可能

人気ブランドを指定できる「ブランドセレクトオプション」も用意。「新しい顧客と出会える場」としてブランド側とも良好な関係を構築。レンタルしたブランド衣料をこれまで購入したことがなかった割合は9割にのぼる(2021年2月調査)。

人とITのベストマッチを追求

人(顧客や現場の声など)とIT(システムやデータの活用など)のベストマッチを追求する。独自のオンラインサブスクリプション・システム、パーソナルスタイリング提案システム、シェアリングの特性を踏まえた物流システムを構築。現場での肌感覚からの情報も重視し、各システムの問題点をアナログ情報とデジタル情報の両面から洗い出し、継続的に改善を積み重ねてきている。

洋服と一緒にスタイリストからのコメントも届く
コーディネートのテーマや着こなしへのアドバイスなどが寄せられる

パーソナルスタイリング提案システム

スタイリストの知見や膨大な顧客利用データを組み込んだAI環境を構築。AIが顧客の希望に沿った洋服の候補をスタイリストに提示。スタイリストは、その情報も参考にコーディネートを作り上げる。スタイリストの腕や個性を活かすとともに、何万着もある中からの選出をサポートする。

コメントの重要性に気づき、言語化スキルの共有を仕組み化

300名以上のスタイリストが稼働。スタイリストの技能は顧客評価や販売率などでレーティングをつけて可視化。表彰制度もある。表彰時には、その要因やノウハウを言語化し、ナレッジとして共有する。
会員満足の分析から、スタイリストが顧客に送るコメントの重要性に気づく。評価の高いスタイリストのコメントの語順などのノウハウを言語化や仕組み化し、全てのスタイリストに共有。スタイリストの採用や業務委託にあたっては、従来からのアート感に加えて、コメントとして言語化できることを重視。コメントの書き方を新たに社員研修メニューに加えるなど、人(顧客からの生の声)とIT(顧客による利用実績データ)を活用しサービス改善を行っていく学習サイクルを回している。

服の返却時には、次回の要望も伝えられる

顧客の「スタイリングカルテ」がより洗練されていく

返却時、デザインや色のお気に入り度などを回答。その回答結果(デザイン、色、サイズ感など)をAIを活用したデータベースに組み込み、次回以降のコーディネートに反映する。回答情報がより多くなるにつれて、カルテが洗練されていく。

「協調フィルタリング」による顧客とスタイリストのマッチング好みが似ている顧客を抽出し、スタイリストと紐付ける

人(顧客)と人(スタイリスト)もマッチング

顧客の好みと洋服とのマッチングシステムに加えて、相性の良いスタイリストとのマッチングも行う。顧客は洋服との出会いに加えて、自身の好みを満たしてくれるスタイリストとの出会いもある。

データサイエンスの知見を活用し在庫管理

データサイエンスの知見を活用し最適な在庫数を把握。ファッションのトレンド変化への対応、多様な洋服の在庫管理、返却期限なしを前提とした返却数予測などを行う。
スタイリストがよく使う洋服や、あまり使わないものをデータ化。回転率や洋服の品質を確認しながら、トレンドアウトの有無を確認する。
全体の事業構造。パーソナルスタイリングにより付加価値を創出し、レンタル利用料・買取料にて収益化月額会員の半数は購入経験あり(2021年6 月時点)

クリーニング工場でのスタッフ数算出にも活用
返却数予測に応じてスタッフを確保する

在庫管理向けに返却数予測モデルも開発

毎日の返却数を予測するモデルも開発。検品、クリーニング、メンテナンスの工程も効率化し、スピーディに洋服を提供。最短1日でレンタル可能。従来のクリーニングは所有者が限定されることを前提とするため、ニオイ対策が限定的であった。新たにクリーニング会社と提携し、体臭もケアできるレンタル専用の手法を開発し活用する。
返却数情報はクリーニング工場とも共有。最適化されたスタッフ数でクリーニング作業を行うことを可能とする。スタッフ不足による返却作業の遅延やスタッフ過多によるコスト増を回避する。
顧客の選好情報と在庫情報に基づき洋服をマッチングするパーソナルスタイリング提供システムと、RFID*を活用した循環型物流プラットフォーム向け情報処理システムの2つの特許も取得している。

「パーソナルスタイリング」という職業像を提示

スタイリスト(300名以上)は、クラウドワーカーとしてサービス提供に関与。スタイリストになるためには、独自の教育研修と試験合格が必要。自社の教育プログラムと試験問題を活かし、2018年に「一般社団法人日本パーソナルスタイリング振興協会」を設立。「パーソナルスタイリング」という新たな職業像を提示し、ファッション業界の活性化にも取り組む。

サーキュラーエコノミーを推進

廃棄された洋服の95% が焼却・埋め立てられ社会問題でもある衣類の廃棄抑制にも取り組む。❶提案型ファッションEC「airCloset Fitting」で試着のみされた返却アイテムを「airCloset」内でのシェアリング、❷レンタル提供が終了した洋服を販売する「エコセール」も展開。
破損などを理由に着用できない洋服は、衣料繊維リサイクルの仕組みに参加し、直接的な廃棄を抑制。シェアリング、リユース、リセール、リサイクルによるファッション業界におけるサーキュラーエコノミー(サーキュラーファッション)の形成に取り組む。2022年2月には、洋服廃棄率ゼロを実現している。

*RFID : ICタグと無線通信によってモノを識別・管理するシステム

組織データ

  • 組織名

    株式会社エアークローゼット

  • 創立年月日

    2014年

  • 業種

    ファッションレンタル

  • 本社所在地

    東京都港区

  • 従業員数

    106名

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