優秀賞/審査員特別賞

日本発グローバル 真面目に働く人のための「金融包摂型」FinTechサービス

Global Mobility Service 株式会社(東京都)

貧困層・低所得層の人々が金融サービスを受けて自動車などのモビリティを用いた仕事に就き、収入を増やし貧困から抜け出すこと、生活を豊かにすることを支援。独自技術によって、支払いが滞った場合には、自動車エンジンなどの遠隔起動制御で支払いを促進する仕組みを創出。「真面目に働く人が正しく評価される仕組み」を国情やモビリティの特性にあわせて構築。

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  • 途上国を含めた金融包摂を実現する革新的な価値提案。社会的な信用度は低いが就業意欲のある人に自動車ローンやリースの機会を創出する「金融包摂」の仕組みを構築。モビリティとITの組み合わせのイノベーションにより、社会的意義の高い革新的な提案を実現している。
  • 国ごとに異なる貧困層の生活状況の実態を十分に踏まえてサービスを開発。運転という就業行動に紐付けて金融サービスの利用機会を創出するとともに、仕事と返済を続けることで信用が高まる仕組みになっている。
  • 問題が顕在化した海外で同社が先行・確立したBOP(Base of the Pyramid*)サービスであるとともに、コロナ禍以降は、日本国内で課題を抱え自動車ローンの審査に通過できない層向けの事業展開を加速。
*Base of the Pyramid:開発途上国を中心に世界人口の約7割を占める低所得層

貧困という社会課題が土俵

2013年に会社設立。貧困という社会課題は経済合理性がないとみなされて長い間見過ごされてきたが、「貧困の負の連鎖を、当社のFinTech を活用したモビリティサービスの提供を通じて断ち切り、多くの人を幸せにしたい」「豊かな生活を手に入れるための手段として、誰もがモビリティを利活用する機会を創出することができれば、自社のビジョンである『真面目に働く人が正しく評価される仕組みを創造する』ことができる」との考えのもと、事業を推進。

約9割がローンの与信審査を通過できないという実情

フィリピンで電動トライシクル(電動三輪)の開発・製造の事業を行う中で、トライシクルドライバーの約9割もがローンの与信審査を通過できないという実情を知る。車を使い真面目に働いている人でも、高額な利用料を支払って借りており、日々の生活費を賄うのに精いっぱいで、いつまでも自分の車が持てず貧困から脱却できない。加えて、その人たちが走らせる古い車の排ガスや騒音問題もひどくなる一方であった。真面目に働く人々への与信を補強し、誰もが車を買える仕組みを創ろうと考え、本サービスを開発した。

金融へのアクセス性を高めるFinTechサービス

世界には銀行口座を持たず金融サービスを利用できない貧困層・低所得層が約17億人も存在。彼らが自動車を用いた仕事に就き、ローンやリースを利用した自動車の購入によって収入を向上させることで、貧困から抜け出すことや、生活を豊かにすることを支援する。

真面目に働く人が正しく評価される仕組み

自動車エンジンの遠隔起動制御技術と自動車の稼働データを取得・可視化できる仕組みを構築し、貧困層・低所得層が自動車ローンやリースを利用できる機会を創出。真面目に働く人が評価される仕組みにより、信用を創造し、トライシクルドライバーからタクシードライバーへといった具合に、本人の努力次第で収入を向上できる道を切り拓く。

利用者目線での迅速対応の仕組み

ドライバーが「より豊かな生活を送る」ことを目的に、安全面(フェールセーフ*)と利便性の双方を実現する車両の遠隔制御の仕組みを提供。万が一支払いが滞った場合、入金完了後、数十秒でエンジンの再起動が可能。東南アジアに多いプリペイド方式の商慣習とも合致。

地域ごとのローカライズと利用者に寄り添ったサービス

技術的な仕組みとローンを準備するだけでなく、利用者と金融機関の間に立って様々なサポートを地域ごとに手がけ、利用・返済に関わるリスクを低減。例えば、カンボジアでは古い車両の利用が多く、同社が利用者と接点を持って支えるための車両修理工場を設置。

海外からサービスを展開、日本でも開始済み

利用車両の累計台数は2万台以上、総走行距離は5億km(2023年2月時点)。デフォルト率は約1%。海外はトータルで1万台。日本でのサービス展開も2019年から本格化。配送事業と通勤の双方で需要があり、非正規雇用者や永住権の無い外国人労働者なども対象。
長年にわたるEVの市場調査・開発・実験の実績の他、EV普及の社会インフラ整備において多くの知見やノウハウを有している。16カ国で85の特許を取得済み(2023年2月時点)。

革新的な金融包摂を実現する提案

従来あるサービスの利便性を高めるようなFinTechではなく、社会的な信用度は低いが就業意欲のある人に自動車ローンやリースの機会を新たに創出する「金融包摂」を実現。組み合わせのイノベーションにより、社会的意義の高い革新的な提案を実現している。

ビジョンに向かう利用価値共創の仕組み

1,000人以上を対象とした貧困層の生活状況(支払い金額、家族構成)のヒアリングを踏まえて、サービスを開発。
トライシクルや車の運転という就業行動に紐付けて金融サービスの利用機会を創出するとともに、仕事と返済を続けることで個人の信用が高まる仕組み。

ビジネスモデル

* フェールセーフ:部品の故障や破損、操作ミス、誤作動などが発生した際になるべく安全な状態に移行するような仕組みにしておくこと

日本発のBOPサービス

問題が顕在化した海外で先行・確立した日本発のBOP(Base of the Pyramid) サービスである。日本国内にも同様に金融へのアクセス性に関する問題があることへの気づきと解決にも貢献。展開国の拡大や、ロボットや医療機器など他の設備への応用、および本サービスが生み出す新たな信用をもとにした様々な連携が期待される。

組織データ

  • 組織名

    Global Mobility Service 株式会社

  • 創立年月日

    2013年

  • 業種

    金融サービス(FinTech)

  • 本社所在地

    東京都港区

  • 従業員数

    224名

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