地方創生大臣賞

代々続く有田焼の窯元。最新式の窯や多様な成形技術、転写技術など多くの技術革新に取り組んできている。有田焼の市場全体が縮小する中、産業システムの再構築を目指して新たなサービスを生み出す。

有田焼の流通経路はほぼ全てが商社経由であり、窯元は商社との取引のみという構造であった。市場の縮小が進み、有田焼自体の存続も危ぶまれる状況下、商社との共存共栄を目指しながらも、有田焼の将来を考え、窯元が持つ技術や知識を敢えてオープンにするなど、新たな販路の拡大や地域の観光に貢献。海外から多数のアーティストを受け入れ、海外への販売経路も開拓。

400年の歴史を持つ有田焼は、芸術的な商品から汎用品まで全て職人の分業制による町内制手工業で制作され、ほぼ全てが商社経由で販売されていた。しかし需要の減少に伴い、メーカーも参戦した市場の奪い合いが増大。そこで、商社と共存共栄しながらも新たな市場を切り開くために、有田町のネットワークを活かして、熟練した職人が作業する工程、パートなど地域の一般住民が作業できる工程をそれぞれ整理。職人だけでなく一般住民、就労支援施設とも連携し、有田焼の製造に参加する町内制手工業を再構築する。その結果、生産能力を高めるとともに、新たな市場開拓と海外を含めたアーティストとの協業、新たな販売方法も創出するなど、伝統産業における新たな製造サービス業の仕組みを作り出している。

様々な分野のアーティストを「アーティスト・イン・レジデンス」に受け入れ、有田焼の技術と彼らの感性を融合することで商品を開発し、海外でも販売。職人の技術とアーティストの創造性とを融合する取り組みを行う。

1.9万m²という広大な敷地に、原型制作、成形、絵付け、窯焼き、箱詰めなど様々な作業を行う現場とトレジャーハンティングのための倉庫、国内外からのアーティストを受け入れる設備や宿泊施設を持つ。
製造現場をオープンにすることで、訪れているアーティストが自由に技術や知識を他の職人から習得している点が、他のアーティスト・イン・レジデンスと異なる。
また、高い技術の製造過程が見られることで、異業種企業も有田焼の技術と価値を知り、共同で商品を開発していく原動力になっている。

町内制手工業の仕組みの構築によって、商社経由では考えられなかったオーダーメイド方式により、ビール会社や飲食店、ホテルなどとオリジナル商品を開発。
国内外のアーティストとアート作品だけではない販売商品を開発し海外でも販売。さらにトレジャーハンティングという新しい購入形態を通して、観光客に有田焼に楽しみながら触れてもらう場を創出するなど、次々に新たな価値共創の形を生み出している。

一般的に日本の伝統工芸産業は高い技術力を持つ一方、伝統や商習慣から革新的なサービスを生み出すのが難しい。技術をオープンにし、様々なステークホルダーとの共創を通して新たなサービスを創出することで伝統産業を再構築している。